脳卒中とリハビリテーション その31 自動的動作、環境に適応する動作、それぞれの脳活動
2016/08/04
こんにちは、大阪市西成区天下茶屋の康祐堂鍼灸院です。
前回は、「歩行するための脳のしくみ」」についてお話ししました。
今回は「自動的動作、環境に適応する動作、それぞれの脳活動」についてお話ししていきます。
さて、前回までに説明したような、からだを吊り上げて体重の一部を免荷した歩行訓練(BWSTT)をおこなっている状態で、fNIRSの測定をおこなったところ、脳卒中の患者さんでは予想に反して、むしろ一次運動野全体の活動が減少することがわかりました。
このとき患者さんは体重の一部が支えられたことにより足が出やすくなったと感じることが多いようです。つまり比較的意識しなくても足を運べる状態になると考えられます。
これを歩行の制御の階層的な構造に当てはめてみると、BWSTTによる一次運動野の活動の減少は、歩行の制御の中心が大脳皮質からそれより下位の脊髄などに相対的に移った結果であると考えて矛盾はありません。
その脊髄には中枢性歩行パターン発生機構(CPG)とよばれる歩行を制御する中枢が存在すると考えられています。たとえば、脊髄に完全な損傷を受けて、大脳からの運動の命令が届かない状態になった猫でも、トレッドミル上でからだを支えれば四足で歩行ができることがその根拠の1つです。
自発的な動作、たとえば歩行のようなリズムは、脳幹部や脊髄のCPGでつくられ、一方で環境に適応する動作は大脳皮質の一次運動野、運動前野、前頭前野などが中心となって担っていると考えられます。
このようなことから、BWSTTは、脊髄損傷による対麻痺(両下肢の麻痺)の患者さんの訓練法として導入されはじめ、最近は例にあげたように脳卒中の患者さんに対する歩行訓練でも応用されています。
一方、歩行のうち「環境に適応する動作」をおこなった場合の脳活動も、fNIRSで実際に調べてみました。健常者がトレッドミルのベルトの上にひいた線をまたぎながら歩行をおこなったところ、「自動的な動作」のときにはあまり活動がみられなかった運動前野や前頭前野の活動が、予想どおり増加しました。
脳卒中の歩行障害に対するリハビリテーションでは、まずは障害物のない状況で麻痺した下肢をうまく振り出す動作と、麻痺のない下肢を振り出すときに麻痺した下肢でうまく体重を支える動作を学習する必要があります。
しかし、さらに社会での活動をより広げるためには、外部の環境に応じて、歩行のスピードや歩幅や足の上げ方などを調節する訓練も重要になってきます。そして、これらの訓練で「鍛えられている」脳の部位はそれぞれ異なっているということです。
今回はここまでです。次回は「リハビリテーションで脳を変える」についてお話ししていきます。
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院長 冨田 祥史(山元式新頭針療法 YNSA学会 評議員)
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