脳卒中とリハビリテーション その23 脳細胞の機能の変化
2016/07/14
こんにちは、大阪市西成区天下茶屋の康祐堂鍼灸院です。
前回は、「経頭蓋磁気刺激法」についてお話ししました。
今回は「経頭蓋磁気刺激法」を用いて調べた結果、どのように脳細胞の機能が変化したかについてお話ししていきます。
さて、経頭蓋磁気刺激法を用いて麻痺した手に対する訓練による運動神経細胞の機能の変化が調べられました。
たとえば、麻痺した手に対する神経リハビリテーションの方法と一つとして強制使用法(制限運動療法。CI療法ともよばれる)があります。この訓練の原理は単純で、麻痺のない側の上肢を三角巾でおおうか、手にミトンを着用することにより麻痺した手を使わざるをえないような状況をつくって、食事をする、電話をかける、字を書くなど、手を使う日常生活動作の訓練をおこなうものです。
この訓練の導入のためには麻痺した手をある程度、握ったり開いたりできることが必要ですが、条件が許せば家庭でも導入することができます。この訓練により脳卒中発症後一年以上経過していても手の機能がよくなることが報告されています。
しかも訓練後に機能が改善した患者さんで、経頭蓋磁気刺激法を用いて手を動かす一次運動野の領域を調べると、手の領域の面積が
訓練前に比較して広くなっていることがわかりました。12日間、麻痺のない手に日中の9割の時間ミトンをはめることで、麻痺したほうの手を使わざるをえないような状況を作った結果、麻痺手の使用頻度が増すだけでなく、頭皮上の磁気刺激に反応する領域が病変のある大脳半球で拡大したことがわかりました。
つまり、訓練により一次運動野の中にある、麻痺手を動かす運動神経細胞が増えたと考えられます。これは運動神経細胞が新しく生まれたというよりも、たとえば肘を動かす役割を持っていた運動神経細胞が新たに手を動かす役割も兼ねるようになったのだと思われます。
このように脳卒中発症後一年以上を経た慢性期になっても脳はリハビリテーションにより変わりうるわけです。
ここで重要な事は、簡単な運動の反復では機能は改善せず、脳もかわらないということです。いまできることより少しだけ難しいことにチャレンジすることが大切で、それができればさらに少し難しいことを訓練することが、機能改善につながると脳卒中の患者さんに対するリハビリテーションの研究でも指摘されつつあります。
このように、麻痺した手の機能回復の背景には脳の変化(機能的再構成)が起こっていることを理解していただけたと思います。たとえば、右手を動かす左脳の一次運動野やその出力経路である錐体路が脳卒中によりダメージを受けたとしても、左脳の一次運動野以外の部分(運動前野や補足運動野)や、ダメージを受けていない右脳からの交叉しない錐体路が失われた機能を代わりに補う予備力が脳には備わっているのです。
今回はここまでです。次回からは「歩行機能回復と脳の変化」についてお話ししていきます。
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院長 冨田 祥史(山元式新頭針療法 YNSA学会 評議員)
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