脳卒中とリハビリテーション その41 脳を考えたリハビリテーションの例
2016/09/12
こんにちは、大阪市西成区天下茶屋の康祐堂鍼灸院です。
前回は、「病棟生活」というテーマでお話ししました。
今回は、「脳を考えたリハビリテーションの例」というテーマでお話ししていきます。
さて、ここで脳を見ながら進めるリハビリテーションの例を紹介します。40歳代後半右利きのある患者さんは、左の基底核という、一次運動野と連結した部位の出血のため右片麻痺があります。肘の屈伸運動をしようとすると肩がいっしょに前後に揺れてしまい、ものを取ることができません。手を握ることはできますが、指を開いたり指折りをすることはできないため、両手の動作もできません。
そこで、自主訓練として、麻痺した右腕を自分の左手で支えて曲げ伸ばしする運動を始めました。腕の可動域を増やしたり、腕の筋肉が過剰に緊張してつっぱった状態を正常に戻そうとすることが目的です。
この動作が上手にできるようになったので、右上肢のリーチ動作(あるものをつかむために腕を伸ばす動作)の訓練時にfNIRSで脳活動を測定してみました。
自分でおこなうリーチ運動をセラピストが観察すると、それは患者さんの麻痺した腕には難しい努力の必要な動作で、肘を伸ばそうとすると肩も一緒に前後に揺れてしまっていました。fNIRSで見たそのときの脳活動は、本来働くはずの一次運動野付近の活動は少なくなっており、両肩を揺らしてリーチしようとするため右側の一次運動野が優位に活動していました。
そこで、セラピストが肘を少し支えて、腕の重みを軽くしながらリーチを誘導したところ、動作は一変して、右腕を曲げようとする屈筋と、伸ばそうとする伸筋の動きがともにスムーズになりました。数分の訓練後にセラピストが支えをはずし、ふたたび自分の力でリーチ動作をすると、動きはなめらかでリズミカルないい運動ができるようになっていました。このようにセラピストの介入直後からみえる動作の改善を即時効果といいます。
そのときに同時におこなったfNIRS測定では、リーチ動作がなめらかになると、脳の活動は一次運動野と体性感覚野付近に左右均等な活動が出てきており、そこから活動の低下していた左側の一次運動野が活動しはじめたことが考えられました。
このようにセラピストがうまく感覚刺激を加えてよりよい運動を誘導することによって患者さん自身のリーチ動作が改善すると、じつは脳の中でも、病変のある大脳半球の一次運動野と体性感覚野の活動が増加していることがわかったのです。つまり、動作が変わると脳も変わっていくのです。
スタッフたち自身、こういう変化が起こることを知ると、日々のリハビリテーションや診察のなかで患者さんに触れながら、脳の中の変化をイメージする機会が生まれ、脳を理解しながら診療しようという思いも強くなります。
実際は、脳の変化は長く続くものなのか、ほかの患者さんにも適用できる普遍的なものなのかなど、医師には検証すべき課題が山積しています。そして、さらに脳がよりよく変化する方法を集めて、それをリハビリテーションの方法論として体型だてていくために、地道な研究を続けています。
今回はここまでです。次回は「入院中のからだと心の変化」というテーマでお話ししていきます。
脳梗塞、脳卒中、片麻痺なら大阪市西成区天下茶屋の康祐堂あけぼの漢方鍼灸院
院長 冨田 祥史(山元式新頭針療法 YNSA学会 評議員)
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