パーキンソン病⑩日常生活で気を付けること
2022/07/09
パーキンソン病は症状の進行にともない体を動かしにくくなりますが、だからといって体を動かさないことは、運動機能の低下を加速させるおそれがあります。安全で動きやすい環境を整え、生活の中でできるだけ動くことを心がけましょう。また、着替え、食事、入浴、トイレなどの場面で、ちょっとした工夫をすることでよりよい日常生活を過ごすことができます。
日常生活で気をつけること、工夫についてお話しします。
住居
転倒する危険性があるのは屋外だけではなく、室内でもよく起こります。室内の危険ポイントを改善していきましょう。
基本はつまずく段差をなくす、立ち上がるための手すりを設置する、足元の明かりをつけるなどです。
・段差をなくす
敷居の段差をスロープを設置して段差をなくします。また、カーペットなどのヘリを固定しつまずかないようにしましょう。
・テープガイド
・テープガイ階段の段ごとや廊下に30〜40cmの一定間隔にまたぐ目安となるテープを貼る。歩く際は足を大きく踏み出すイメージで歩きましょう。
・足元のライト
廊下や階段、廊下の足元にライトをつけましょう。足元が見えるようにし転倒の予防をしましょう。
・人を呼ぶ手段の確保
ひとりで過ごしている時に動けなくなる恐れがある場合は、トイレや浴室、ベッドの近くにブザーを設置する。携帯電話を首から下げて身に着けるなど、助けを求める手段を確保しておきましょう。
・寝具や家具
パーキンソン病の方は睡眠障害が多く見られます。睡眠障害には様々なタイプがあり必要な対応が異なりますので、睡眠障害の内容を詳しく把握して主治医などに相談しましょう。また、ベッドや椅子はしっかりと休むために必要な家具です。使い心地た安全性に配慮し選ぶようにしましょう。
睡眠障害は日中に眠気が残るだけでなく身体の動きに影響することもあります。日中は太陽を浴びて十分に運動し、寝室の環境を整えるなど睡眠環境を良くするよう心がけましょう。
ベッドの選び方
・ベッドの横に柵がついたもの(転倒防止、寝返り、起き上がりに便利)
・ベッドの高さはベッドの端に座って足の裏がしっかりつく高さ
・マットのヘリがしっかりしているもの(沈み込んでのずり落ち、落下防止)
・可能であれば介護用の電動ベッド
椅子の選び方
・お尻がしずまない
・回転しない
・重量があり安定している
・幅が広すぎない(体が横に傾かない)
・肘掛けのあるもの(立ち上がり等に便利)
・足の裏がしっかりつく高さ
・着替え
パーキンソン病が動作が小さくなったり、関節を動かせる範囲が狭くなるため衣類は脱着のしやすいものを選ぶようにすると着替えが楽になります。着替えはバランスを崩しやすいので、椅子やベッドに腰掛けてゆっくり行うようにします。外出の際の靴もマジックテープやファスナー式で着脱しやすく素材の軽いものを選びましょう。
・素材が伸縮性のあるもの
・袖を通しやすいように前開きの服にする
・衣類のボタン部分は、大きなボタンやマジックテープに付け替えておく
・ファスナーは嵌めやすいよう大きな持ち手のものにする
・ズボンはウエストのゴムのものを選ぶ
・食事
パーキンソン病では、嚥下障害によって、むせたり水分や食べ物を誤嚥しやすくなり、肺炎になることもあります。普段から誤嚥を予防するような食生活を意識しましょう。
細かい動作がしにくくなり、食事を口に運ぶことが難しい場合やこぼしてしまう場合には、使用する食器や使い方を工夫してみると良いでしょう。
・ひと口で飲み込むには大きい食べ物は食べやすい大きさにする
・のどを通りにくい食べ物(もちや硬い肉など)は避ける
・噛んでいるうちに水分が出てむせやすいもの
・小さくて気管に吸い込んでしまいやすいものに注意する
介護者は、ひと口の量を少なくし、口の中の食べ物がなくなってから次のひと口を与えるようにする。
食事中の姿勢
椅子に座る際は、姿勢が左右に傾かないよう、また深く腰を掛けて足の裏の全面を床に着けるようにしましょう。姿勢が傾く場合は、利き手と反対側の腕をテーブルにのせて、姿勢をまっすぐに保ちやすくすることで対応も可能です。
食器の工夫
細かい動作がしにくくなり、食事を口に運ぶことが難しい場合やこぼしてしまう場合には、握りやすい箸やスプーン、フォークなど、使用する食器や使い方を工夫してみると良いでしょう。
浅めの器や滑り止めのついている皿を使ったり、滑り止めシートを敷いた上に食器を置くことで、食事がすくいやすくなることもあります。
食器と口の距離が短くなるように、テーブルの高さを高めに調整することも効果的です。
トイレ
パーキンソン病患者さんのトイレトラブルは、便秘と頻尿です。予防するためには、水分をたくさん取り、規則正しくトイレに行く習慣を身につけましょう。
トイレは、和式よりも洋式の方が便座への立ち座りが簡単で使いやすいでしょう。また、手すりを設置するなど、快適なトイレ環境づくりに配慮しましょう。
便秘
食物繊維の多い食品や発酵食品などの摂取を心がけましょう。
また、十分に水分を取るようにしましょう。
(医師に水分制限をされていない患者さんは、少なくとも1日1リットルの水分摂取が必要です。)
排便の出やすい時間が決まっている患者さんもいらっしゃいます。症状日誌に排便時間を記録することで、傾向がつかめる場合があります。傾向がつかめれば、便意を催さなくてもその時間にトイレに座る習慣を作ることで、規則正しい排便習慣がつくこともあります。
頻尿
トイレを我慢せず、早めに規則正しくトイレに行く習慣をつけましょう。
夜間は身体の動きが悪く、トイレまで間に合わなかったり、暗くて移動が危ないこともあります。
尿器やポータブルトイレの利用も検討しましょう。
トイレの工夫
和式より洋式の方が、便座への立ち座りが簡単で使いやすい
洗浄機能付き便座があれば、後始末も楽になる
手すりがあると、向きを変える動作や便座からの立ち上がりが容易
便器のわきにははねあげ式の手すりがあると便利
扉は、引き戸のほうが転倒しにくく、転んだ場合や車いすになった場合の対応も可能
入浴
入浴は、筋肉の固縮をやわらげ、自律神経障害による冷えを改善します。また、患者さんの気分転換や食欲増進にもつながります。 安心して入浴するために、浴室の安全対策を施しましょう。
・浴室は滑りやすく危険ですのですべり止めマットを敷く
・床からの立ち上がりがしやすいようにシャワーチェアーを利用する
・脱衣場にもいすを置けば、転倒の心配もなく、衣類の脱着がしやすくなります
・浴槽から急に立ち上がると、血圧が下がり立ちくらみが起こる危険があるので、浴槽からはゆっくりとした動作で上がるようにしましょう
・冬場は、脱衣場にも簡易暖房器具を設置して、浴室と脱衣場との寒暖差をなくしましょう
・入浴は、身体の動かしやすい時間に行いましょう。
※浴室の整備によって介護の負担は軽減できますが、入浴は全体的な介護量が多いので、通所サービスや訪問入浴も検討しましょう。
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